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2021.09.02ブログ
ものの見方は変わるのかー認知バイアス
〈ものの見方は何で決まるの?〉
突然ですが、下のイラストは何に見えますか?
このイラストには2人の人物が描かれています。画面の奥に顔を向けている(後ろを振り向いている)若い女性と横顔の老いた女性です。若い女性にしか見えない場合は、耳を目に、顎を鼻に、首周りを顎にみます。老婆にしか見えない場合は、目を耳に、鼻を顎に、顎を首周りに見ようとすることで両方の人物を見ることができるでしょう。
この絵は、My Wife and My Mother-in-law.(Hill ,W .E . ,1915)といい、反転図形とも呼ばれています。
反転図形(reversible figure)とは、客観的には同一の図形でありながら、知覚的には2つあるいはそれ以上の形が成立する図形です。他の反転図形も見てみましょう。
次の絵は何に見えるでしょうか。
左にくちばしを突き出したアヒルに見えた人もいるし、右を向いたうさぎに見えた人もいるでしょう。
この絵は、ウサギとアヒル図形(Jastrow,1900)と呼ばれています。左の白っぽい部分をくちばしと見るか、耳と見るかで、図の全体の見方が変わっていきます。
今、この図を見ながら、ウサギとアヒルを交互に見ることはできるでしょうか。おそらく、コツを掴めばほとんどの人ができるでしょう。
つまり、私たちにとって、「見えている」ものとは、目に映る形そのままというよりは、「自身が解釈をした結果」であることがわかります。
ものの見え方というのは、人や周囲のこれまでや直前の状況に左右されることもわかっています。
Brugger and Brugger(1993)の研究では、ウサギとアヒル図形を10月に見せられた子どもの大多数が、アヒルやトリと回答しているのに対し、イースターに見せられた子どもの多くは、この図をウサギと回答しており、統計的にも明確な差が示されました。
このような反応の違いは年齢に限らず同様に起こることがわかっています。
〈見えないものは見えるようになるのか〉
先程のウサギとアヒル図形を2つ並べてみましょう。
あなたの目には、何の動物が何匹映っているでしょうか。ある実験では、ウサギとアヒル図形を2つ並べて実験参加者に提示した際、自発的に「どちらか一方をウサギ、他方をアヒル」として見た参加者は全体の2.3%しかいなかったと報告しています。
しかし、意識的にウサギとアヒルを見るように参加者に頼むと、その割合は61.9%まで上がりました。さらに、「ウサギを食べようとしているアヒル」という語の提示では、多くの参加者(86.6%)がウサギとアヒルを見ることができるようになったそうです。
この実験では、声かけひとつで、ものの見え方が変わることがあると示されました。
〈偏見や先入観に惑わされないために〉
上記のように私たちは、同じ状況にあっても、個人の解釈の仕方や周囲の環境によってものの見方が異なることがあります。私たちの身の回りの出来事は、既存の記憶や知識を活用して、立てられた仮説や予測、期待をもとに情報が処理されているのです。
これは、脳の情報スピードが高くなり、様々な状況の判断を素早く行えるというメリットもあります。しかし、一方で個人の偏見や先入観で物事を判断してしまって、一つの考えにとらわれやすくなることもあります。
社会をよりよく生きるためには、個人の捉え方の癖を把握したり、自身のものの見方に固執せず、他の考えも想像してみることが、必要なことのひとつなのかもしれません。
山崎紗紀子 宮代こずゑ 菊池由希子(2021)情報を正しく選択するための認知バイアス辞典
中島義明 安藤清志 子安増生 坂野雄二 繁桝算男 立花政夫 箱田裕司 (1999) 心理学辞典 有斐閣
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