-
Blog
-
Blog心理学用語集
Blog心理学用語集
2021.07.20心理学用語集
レジリエンス(resilience)
レジリエンス (resilience)
レジリエンス(resilience)とは、Rutter(1985)によって初めて示された概念であり、「深刻な危険性にも関わらず、適応しようとする現象」と定義されています。
日本では、「立ち直る力」「回復力」「弾力性」などと翻訳されており、ストレス状態から回復する力のことです。そして、これらはもともと人間に備わっている力のひとつです。
ストレスがかからないように生活をすることは、人間が健康に生きるために重要なことです。しかし、我々の生活する現代社会には、人間関係、仕事や勉強、あるいは自然災害など、多くストレッサーがあり、それらを全て回避して生きていくことは困難であると考えます。
そこで、いかにストレスと向き合い、それらを乗り切れるかが重要な課題となります。近年、ストレス反応やネガティブな出来事から立ち直る心理特性としてレジリエンスが注目されています。
○子どものレジリエンスについて○
乳幼児期の子どもは、初めて言葉を話したり、歩くことなど、できないことができるようになるために、何度も失敗しながら、経験を積み、乗り越えていきます。
そのように、レジリエンスは子どもの頃から備わっています。
しかし、子どもは様々なことに影響を受け、自分ひとりの力では回復が難しいこともあります。特に、子どものレジリエンスには周囲の大人の関わり方、仲間の意見や振る舞いが大きな影響を与えるものとして考えられています。
子どもが困っているときには大人のアドバイスやヒントなどの支えが必要です。困ったときに大人から助けられ、それを乗り越えた経験が、子どものレジリエンスの成長につながります。
ここでは、レジリエンスを支えるための力として9つの力をご紹介します。
① 考えや感じ方を修正できる力
自分の考えがありながら、相手の意見を受け入れ修正できる子は、周りに従順なのではなく、思考が柔軟な子であると言えます。柔軟性を持つということは、色々なコミュニティで生きていく大人にとっても必要な力であるといえます。
②忘れる力
ストレスに必ず向かい合うということは、時に子どもを苦しめてしまうことがあります。ストレス源を忘れさせること(忘れるような言葉かけや関わり)も子どもを回復させます。これは、大人の視点ではなく子どもの視点で問題の重要性を考える必要があります。
③考えを受け入れる力
人の考えや意見を素直に受け入れる力です。実際に困ったとき、周囲の大人のアドバイスによって問題が解決することもあるでしょう。そのような経験で、レジリエンスは成長していきます。しかし、子どもが「わかりました」と言っても大人の説明とズレが生じることもあります。言動を見て判断することが必要になります。
④教えてもらうための質問をする力
「〜がわかりません」「〜ができません」「〜を教えてください」と質問をすることで、大人から適切な答えを知ることができます。また、このように素直に聞くことによって、適切な答えを知って対応ができる経験を積むことで、「考えを受け入れる力」も同時に学習することができます。
⑤承認を求める力
周りから受け入れられている安心感を持つと、人は、「他者から認められたい」という欲求が生まれます。特に、幼児期の子どもは「見て」「聞いて」などと訴えるようになります。周りの承認を求め、それらが大人によって認められることで、求められる行動がわかるようになります。
⑥確認をする力
子どもは、確認をしないことによって、不必要な失敗を重ねてしまい、やる気を損ねてしまうことがあります。「これでいい?」と大人に聞いたり、ものを借りるときは「貸して」と相手に許可を得ることで、不必要な失敗を防ぐことができます。
⑦柔軟な見方ができる力
子どもは成長していくと「○か×か」というものごとの考え方から「〜かもしれない」という見方が出てきます。「絶対」「全然」という見方をするために、ストレスから立ち直りにくい場合もあり、これは大人でも同様です。「○か×か」と決め付けない見方が重要となります。
⑧応援されて喜びを感じる力
子どもは、「頑張れ」と応援されることによって、最後までやり遂げることができたり、徒競走ではスピードアップすることがあります。誰かに応援されているという実感は、ストレスを受けたときの立ち直る力に重要な役割を持ちます。
⑨励まし、慰めてもらえる力
必死に頑張っても、理想とする結果に結びつかないこともあります。何かで負けたり、できないことがあっても、大人や友達が側にいてくれることや、「次に頑張ればいい」と励ましの言葉をもらうことで、子どもの心は回復していくと考えられます。
出典・参考
Rutter M. (1985) Resilience in the Face of Adversity:Protective Factors and Resistance to Psychiatric Disorder, British Journal of Psychiatry,147,598-611
湯汲英史 (2018) 「子どもの発達とレジリエンス 保育の本」 株式会社学研教育みらい
シェアする