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2016.12.07ブログ
不登校について
12月7日の参議院本会議において、不登校の小・中学生の支援強化を目的とした教育機会確保法が可決されました。
今までの法律上では、義務教育期間にいる子ども達は学校に行くべきであるとされており、それ以外の場所では法的な保証がありませんでした。この法案の可決及び施行により、止むに止まれぬ事情により学校に行けない子ども達にとって保証された居場所ができることを願っております。
一方で、こういった法案においては、法による保証を過度に適用する危険性があることに注意をしなければいけません。「不登校」という言葉はあくまで「学校に登校していない」という状態像を指しているのであって、不登校状態になった原因は人それぞれなのです。よって、その子の状況によっては学校に行かせた方が良い場合もありますし、逆に学校を休ませた方が良い場合もあります。以下、参考までに代表的な不登校のタイプと対応について書かせていただきます。
⑴発達型
発達に何らかの特性があり、それが原因で学校に適応するのが難しくなってしまった場合などがこのタイプに該当します。自閉スペクトラム症やAD/HD、学習障害、知的能力障害などの発達上の特徴を持った子どもが、お友達や先生とのコミュニケーションがうまくいかなくなったり、学力的についていけなくなったりして学校にいけなくなることが多くあります。また、こういった子どもは得てして学校などの社会的環境よりも、よく見知った家庭環境の方が居心地が良いため、社会的環境に出ることを避けることがあります。こういった発達型の不登校に対しては、子どもの発達特徴に合わせた発達支援と、今の子どもの能力でも負担なく学校に通えるような環境調節をした上で、上手に学校復帰をさせていく必要となります。
また、意外かもしれませんがギフテッドという知的に非常に優れた子どもが、学校での学習がつまらなくなってしまったり、お友達とのコミュニケーションのレベルが合わずに孤立感を深めてしまい不登校になってしまう場合もあります。この場合は、その子どもにあった適切な学習環境を用意してあげる必要があります。
⑵神経症型
このタイプの不登校の子どもは元々過敏な特徴を持っていることが多く、いろいろなことで不安になってしまいます。そして、学校での課題や人間関係、環境変化などにより不安が高まり学校に行くことが難しくなってしまいます。このような不登校の子どもに対しては、先の発達型不登校のような積極的な学校復帰を目指す対応をとってしまうと不安が大きくなってしまい、かえって不登校状態が長引いてしまいます。ですから、不安が下がるまでゆっくり安心して休めるような環境を整えてあげる必要があります。また、こういったタイプの子どもには心理カウンセリングやプレイセラピーが適しております。小・中学校にはスクールカウンセラーの先生もいらっしゃいますから、ご相談してみると良いかもしれません。
⑶環境・家庭要因型
貧困や家族関係の不和などの家庭環境の不安定さ、また、急な転校やいじめといった環境の要因が不登校の原因となっているタイプです。こちらのタイプは子ども自体に不登校の原因があるわけではなく、家庭や学校などの環境の歪みをその子どもが背負わざる得ない構造になっていることが原因です。ですから、その子どもの不登校自体にアプローチするのではなく、家族や学校などの環境側の問題を解決しなければなりません。
⑷息切れ型
このタイプの不登校の子どもは頑張り屋さんでとても良い子です。なので、今までこれといって大きな問題を起こしたこともなく、むしろ優等生であることが多いです。なので、周りの大人たちは「あんなに良い子がどうして不登校に・・・」というように、不登校になった原因を不思議に思うことでしょう。しかし、このタイプの子どもの不登校になった原因こそ、「良い子」であることなのです。過度に「良い子」でいようとすると、いつも周りの目を気にしてしまい疲れてしまいます。授業中も休み時間も、また家庭でも、良い子であろうとふるまうために、気を抜いて休むことが上手にできません。いつもどんなことでも全力で取り組んでしまうために少しずつ余裕がなくなっていき、心のエネルギーがなくなった瞬間にあらゆることが頑張れなくなってしまうのです。このタイプの不登校は特に周りの目が気になってしまう思春期に多く見られます。
このタイプの不登校の子どもに対しては、まずは神経症型と同じく、ゆっくりと安心して休ませてあげることが必要です。さらに、頑張りすぎてしまう特徴に対しては適度に力を抜いて物事に取り組むことを学ばせると良いでしょう。元々とても良い子ですから、少しくらいはワガママを言える子にしてあげると学校に戻ってからは色々なことを長く頑張れるようになります。
⑸社会性未熟型
このタイプの不登校の子どもはとても良い子である息切れ型と真逆で、とてもワガママで社会性に欠ける子どもであることが多いです。ですから、少しの困難さにも立ち向かうことができず、学校で辛いことがあると登校することを拒否してしまいます。
ですから、社会性未熟型の不登校の子どもに対しては積極的に学校に行かせるようにしていきます。学校などのルールのある環境でルールに則った行動をとらせて行くことで、徐々に社会性を身につけてあげます。また、この時に一番困るのが子どもを学校に行かせなければいけない保護者です。学校に行かせようとすると子どもは激しく抵抗することが多いですから、抵抗する子どもに対する具体的な対応策を用意し、適切に実行しなければなりません。対応に迷ってしまうようでしたらカウンセラーなどの専門家に相談をして毅然とした態度で子どもに接することができるように準備をすると良いでしょう。
このように同じ「不登校」といっても原因は様々であるため、対応もそれに合わせて変えていかなくてはなりません。また、全てのケースが一つのタイプに綺麗に分類できるわけではなく、原因が重複している場合も多くあります。よって、個別のケース状況をよく見立て、どのタイプの不登校であるのか、どの問題から解決をして行くべきかを慎重に判断しなければいけません。
この不登校に対する対応はタイプによって真逆の対応を取ることもあるので、対応を間違えてしまうと逆に問題を酷くしてしまいます。ご自身で判断がつかない場合は専門家に相談をして見立てを立ててもらうと良いでしょう。
富田賢史
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